FGRAPHY

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 石編 本番プリント

001
感光乳剤保温と塗布(暗室)

室内であらかじめ温めておいた肉厚の容器に、液状化した感光乳剤を必要量を移し、下塗り剤の上にハケかスポンジバケで乳剤を塗布する。

注意:塗り方に決まりはないが、きれいに塗りたいなら縦横の重ね塗りをすればいい。暗室でいきなり塗り始めると失敗が多いので、あらかじめ画用紙に墨汁で練習しておくことを勧めたい。

またこの感光乳剤の特性として、乾燥が進めば進むほど感度が高くなるので、暗室内で最低6時間程度は自然乾燥したい。ただし急ぐ場合はヘアドライヤーで温風乾燥してもいいが、急激に温度を上げると、ひび割れすることがある。

 

テストピースの作成と本番プリント(暗室)

同じ材質の石がたくさんあれば、複数の石に同じ塗り方で感光剤を塗り、そのうちの1枚をテストピースとして使用し、露光データを得ることもできる。

ただしこの方法はかなり不経済なので、小型のタイルや同じ石の破片を利用して、テストピースを作っておくといい。

テストピースのプリントで露光データを得たら、いよいよ本番の露光開始で、引伸しレンズの前に赤フィルターをかけ、テストピースのプリント時と拡大率が同じことを確認し、乳剤の塗布面がきちんと画像をカバーするように石をセットする。

注意:複数の石に同時に感光乳剤を塗った場合は、短時間の間に使い切ってしまうか、2枚ずつペアにして、片方をテストピースに使用するようにしないと、乳剤の感度が変化してテストピースの役をなさない(これは小型のタイルや破片を用いる時も同じ)。 

また、小型のタイルをテストピースとして用いる時は本番の石と厚みが違うので、タイルの乳剤面の高さを調節して、拡大率を一定に保つようにする。

現像処理

現像から水洗に至るまでの処理工程は、手作り印画や普通の印画紙の処理工程と大差はない。

材質が重く処理液の中に完全に沈み込むので、浮き上がりによるムラは心配ないが、ピンセットで動かすわけにはいかないのが、不便といえなくもない。

注意:各処理時間は現像1~2分。停止30秒~1分。第一定着5~10分(フジフィックス)。第一水洗2~3分。第二定着3~5分(スーパーフジフィックス)。QW(水洗促進剤)10分。AGガード1分と、約1時間30分の時間を必要とする。

現像処理後の乾燥は、乳剤塗布後と同様、ゆっくり自然乾燥するのが最もいい。

乳剤塗布後の印画素材は長期保存がきかない(カビがはえる)ので、1~2週間のうちに現像処理したい。

彩色

石を支持体としたフジイ・グラフィーも、他の素材を用いたものと同様、材料の持ち味を十分に生かした仕上げをしてみたい。
彩色はカラープリントのレタッチ用顔料を水でうすめ、色があるかないかの淡い色を塗り重ねるようにして、石の肌の模様や光沢を損なわないようにしてほしい。

注意:パレットに少量の顔料をとり、好みの色になるよう適当に混ぜ合わせ、水でうすめながら広く淡い部分から、狭く濃い部分へと彩色していく。淡い色を何度も塗り重ね、ややうすいかなと思うくらいでやめておくのがコツだ。

一回の筆さばきごとに塗った箇所をティッシュペーパーや綿棒で抑え、水分を吸い取って、必要な部分以外に色がにじみ出さないようにする。

表面処理

彩色が終わったら十分に自然乾燥させて、顔料を安定させ、画像表面のはく離や変色を防止するためのスプレー式の表面保護剤を吹き付けておく。

こうしておけば長期の保存も可能で、自分の作品をゆっくり堪能することができる。

 

 

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 石編

002

紙・布・木と支持体選びの変遷を続け、その都度その素材の持つ面白さに魅了され、深みに入ってしまったフジイ・グラフィーだが、これまでの過程からすれば、川原の石にも写真をプリントすることは不可能ではない。

球面や凹凸面のある石でも平面石とは違ったデフォルメを生かした楽しみ方があるが、平面に加工した石やタイルを支持体にしたほうが初心者には向いているであろう。

手作り印画に必要な薬品・用品

石を支持体とした手作り印画に必要な薬品・用品で通常のモノクロ印画処理と異なるものは下塗り剤、アートエマルジョン、マットスプレー、ハケ、スポンジバケ、素材の石で、その他の薬品、機材は手持ちのものがあればそのまま利用できる。

下塗り剤塗布前の処理

平面加工された石の表面はツルツルになっていて、下塗り剤を塗っても弾じかれてはく離してしまうことがある。
これを防ぐため、下塗り剤を塗る前に粗目の紙ヤスリで塗布面をよく磨き、表面をザラザラにしておく必要がある。

注意:平面だけでなく四隅の角になっている部分も磨いておかないと、下塗り剤を縁まで繰り広げても、そこからはく離が始まるので注意したい。

また、ガラスやタイルで表面に水をたらすと、丸い水滴となってしまうものにも、この加工が必要になる。

下塗り剤の塗布(明室)

ヤスリでの加工が終わった石の露光面とする部分に、ハケかスポンジバケを用いて下塗り剤を塗布する。
下塗り剤を必要量容器に移し、露光面から四隅の縁まで、ムラなく塗り広げる。

注意:紙ヤスリで表面を磨いた後は中性洗剤でよく洗い、十分に乾燥した後(最低でも72時間)に下塗り剤を塗る。磨きカスが残っていると、下塗り剤と混ざって、表面が凹凸になることがあるので注意したい。

下塗り剤の乾燥(明室)

ホコリのない室内で72時間程度自然乾燥すれば、膜が完全に安定する。ただし、特に急ぐ場合はヘアドライヤーを用い、50センチくらいの距離から約40度C前後の温風を当てれば約20分で乾燥する。

注意:急激に乾燥させないこと。ひび割れを起こす原因になるからである。

感光乳剤塗布の準備

感光乳剤は常温ではヨーグルト状になっているので、密栓したまま40~50度のお湯で30~40分温め、液状にする。
この間に引伸機にネガをセットし、拡大率を定めておく。

注意:メスシリンダーのような計量容器を用意しておけば、保温容器に乳剤を移す際必要量だけを計ることができる。また拡大率の決定は、同じ厚みと大きさの石があれば、それを利用するようにするといい。

 

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 木編 彩色・表面処理

003

プリント・現像処理

テストピースのプリントで露光データを得たら、いよいよ本番プリントを開始する。
引伸しレンズの前に赤フィルターをかけ、ランプをつけてテストピースの露光時と同じ拡大率であるかを確認し、プリントを開始する。
露光終了後の現像、停止、定着、水洗処理は普通の印画紙の処理と大差はない。ただし、感光面を上にしたまま処理液に入れっ放しにすると、浮き上がって現像ムラなどの原因になるので、十分に注意が必要だ。

*注意:木の浮力で感光面が処理液から浮き出てしまうので、処理液に入れる時は必ず感光面を下にして入れるようにする。現像の進行状況を確認する際も、両手で押さえ、感光面が十分処理薬に浸っているようにする。 

各処理時間は現像1~2分、停止30秒~1分、第一定着5~10分(フジフィックス)。第1水洗2~3分。第二定着3分(スーパーフジフィックス)。QW(水洗促進剤)10分。第二水洗1時間。AGガード1分と、約1時間30分をかけ、その後十分に自然乾燥する。

彩色

木を支持体としたフジイ・グラフィーの面白さは、木肌の模様を活用することでもある。
自然が作り出したものに自分の写真を重ね、2つと作れない、オリジナル作品を生み出す魅力がそこにある。
彩色はカラープリント用のレタッチ用液体顔料を水でうすめ、淡い色を塗り重ねるようにして、モノクローム画像のトーンと木肌の模様を殺さないように塗ると、感じのいい仕上がりになる。

*注意:彩色の顔料はパレットに少量とり、適度に混ぜ合わせて好みの色を作り、水でうすめながら、広く淡い部分から狭く濃い部分へと彩色していく。淡い色を塗り重ねるのが基本で、いきなり濃い色を塗ると、失敗した時とり返しがつかない。

筆さばきの1回ごとに、塗った箇所をティッシュペーパーで抑えながら水分を吸い取り、必要な部分以外に色がにじみ出さないようにする。
細かい部分は細筆を使うこともあるが、その時は綿棒で水分を吸い取るようにする。

表面処理

彩色が終了したら、十分に自然乾燥させて顔料を安定させ、その後スプレー式の表面保護剤を画面全体に吹き付け、画像表面のはがれや変化を防止する。こうしておけば長期の保存も可能になる。

 

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 木編

004

フジイ・グラフィーの楽しさは、支持体とする素材をあれこれ探し、挑戦するために思考錯誤することにもある。

今回の支持体として取り上げた木も、別に神社の絵馬からヒントを得たわけではないが、木目の模様を上手に生かすことで、紙や布とは味わいの異なった作品を仕上げることができると思ったからだ。ただし手軽に入手できるベニヤ板のような合板は、彩色後に木のアクが表面に浸み出すことがあるので、多少高価になるが、一枚板を使うことをおすすめしたい。
また、生木や乾燥不十分な木は、時間の経過でひび割れを生じることもあるので避けたほうがよい。

手作り印画に必要な素材

木を支持体とした手作り印画に向いている木材は、木肌の色がなるべく白っぽいものがいい。木目模様が美しくとも、木肌の色が強いものは、せっかくの写真のトーンや彩色の色を相殺してしまうことがあるからだ。

手作り印画に必要な薬品・用品

木を支持体とした手作り印画に必要な薬品・用品で通常のモノクロ印画処理と異なるものは、アートエマルジョン、ハケ、スポンジバケ、乳剤保温容器、マットスプレー(仕上がり後使用)などで、その他の薬品・用品は手持ちのものがあればそのまま利用できる。

下塗り剤の塗布(明室)

木肌に直接感光乳剤を塗ると、経時変化で乳剤のはく離現象が生じる。
下塗り剤はそれを防止するためのもので、下塗り剤を塗って十分乾燥させた後に感光乳剤を塗布すれば、支持体と乳剤がはく離するのをある程度防ぐことができる。

注意:下塗り材は明室で原液を常温のまま塗ることができるが、水で希釈することはできない。

また塗布面はあらかじめ中性洗剤でよく洗って乾燥させておき、感光乳剤を塗布する面以外の全ての面に塗り、下塗り材で支持体全体をくるんでしまう。このようにすることで下塗り剤の乾燥時の表面張力で木が反ることを防ぎ、木口からの現像処理薬の浸入による木質の変化を防ぐことができる。

下塗り剤の乾燥(明室)

下塗り剤の塗布面は15分程度放置すれば固まるが、72時間程度自然乾燥すれば内部まで完全に乾燥し、膜が安定する。

特に急ぐ場合はヘアドライヤーの温風乾燥でもいいが、急激に熱を加えると膜のひび割れを起こすこともあるので注意したい。

注意:ドライヤー使用の場合は50センチくらい離し、約40度C前後の温風を当てると、20分くらいで乾燥する。

乳剤塗布の準備

常温でヨーグルト状になっている感光乳剤を、密栓したまま40~50度Cのお湯で30~40分温め、液状にする。

この間に引伸機にネガをセットし、拡大倍率を決定する。

注意:同じ大きさ、厚さの木が2枚あれば、裏面を利用するが、同じものがない場合は膜面を傷つけないようティッシュペーパーの上にピントルーペを置くようにする。

手乳剤の保温と塗布(暗室)

暗室内であらかじめ温めておいた肉厚の容器に液状化した感光乳剤を必要量移し、ハケかスポンジで下塗り剤の上に必要な範囲に任意の形で塗り広げる。

注意:乳剤は温度が低下すると硬化するので、保温バットなどで40~50度Cを保ってやると、硬化せず塗りやすい。

また乳剤の塗り方は、明室で画用紙などに墨汁を用いて練習しておくと、暗室内での本番でもとまどうことがない。

乾燥は当然のこととして暗室内で行うが、この液体感光乳剤は乾燥が進むにつれて感度が高くなるので、少なくとも6時間以上は自然乾燥してから使用したい。

テストピースの作成

木は紙や布と異なり、同じ素材を小さく切ったテストピースは作りにくいが、できるだけ同じ材料を2枚以上用意し、同じ塗り方で感光乳剤を塗り、同じ時間だけ自然乾燥しておけば、その中の1枚をテストピースとし、そのデータでプリントすることができる。

注意:杉や桐で作られた菓子箱などは、フタの上の部分を本番用、縁の部分をテストピースとして使用できる。

 

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 布編 彩色・表面処理

005

プリント(暗室)

テストピースのプリントで露光データを得たら、いよいよ本番のプリントを開始する。

引伸機のランプをつけ、拡大率がテストピースのプリント時と同じであるかを確認する。引伸しレンズの前に赤フィルターをかけ、乳剤の塗布面が画像をきちんとカバーできるように布を置き、粘着テープで四隅を固定する。

*注意:布は紙と違い、織目から光が裏面に抜け出して乱反射し、乳剤を塗った感光面にカブリ現象が生じやすいので注意したい。感光して黒くなった印画紙か、黒い布を感光面の下に置き、乱反射によるカブリを防止する

また、乳剤が乾燥すると、その部分が波打ったようになるので、露光時は乳剤面を無反射ガラスで押さえ、平面性を保つようにする。

現像処理(暗室)

現像、停止、定着、水洗処理は手作り印画紙や普通の印画紙の処理と大差はない。しかし露光した布をそのまま現像液に入れると、感光面以外の布も現像液を吸い込むことになるので、短時間(1分程度)布全体を水につけてから現像液に入れるようにするとよい。

注意:現像液に入れる前の水浴は、水洗用のバットで行わず、必ず別のバットを用意する。

各処理時間は現像1~2分。停止30秒~1分。第一定着5~10分(フジフィックス)。第一水洗2~3分。第二定着3~5分(フジフィックス)。QW(水洗促進剤)10分。第二水洗1時間。AGガード1分と、約1時間30分の時間を必要とする。
乾燥は乳剤塗布後と同時に、自然乾燥が一番よい。

彩色

布を支持体としたフジイ・グラフィーは紙とは異なった趣きがあり、面白い。
彩色は、カラープリントのレタッチ用液体顔料を水でうすめ、淡い色を塗り重ねるようにすると、モノクローム画像のトーンを殺さず、感じのいい仕上がりになる。

注意:彩色はパレットに少量の顔料をとり、適当に混ぜて好みの色を作る。水でうすめながら広く淡い部分から狭く濃い部分へと彩色していく。淡い色を重ねるように塗るのが基本で、いきなり濃い色を塗ると失敗する恐れがあるので注意したい。

一回の筆さばきごとに塗った箇所をティッシュペーパーで抑えながら水分を吸い取り、必要な部分以外に色がにじみ出さないようにする。
細かい部分の彩色は細筆を使うことになるが、その時は綿棒で水分を取りながら色付けするとよい。
布は繊維の毛細管現象が強いので、この処置を怠るととんでもないところに色のにじみが出て、せっかくの作品をだめにすることもある。

表面処理

彩色が終わったら、十分に自然乾燥させて顔料を支持体に安定させる。
画像表面のはがれや変色を防ぐために、乾燥後はスプレー式の表面保護剤を画面全体に吹き付けておくと長期保存も可能である。

装飾

布は紙と違い腰が弱いので、額に入れて飾るにしても何らかの裏打ちが必要である。乾燥時に使用した油絵のキャンバスの木枠に張るのもいい。

 

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 布編

006

紙で成功すれば、次は布を支持体にしたフジイ・グラフィーにチャレンジしてみよう。

一口に布といっても、材質、織り方、薬品処理の有無などによって、支持体としての適応がある。支持体に適している布地は帆布、デニム(厚手の木綿地、サテン)だが、購入時に布地に糊がついている場合は一度水洗して糊を除いてから感光乳剤を塗布しないと、乳剤が化学変化することがあるので注意したい。

 

手作り印画に必要な用品・薬品

布を支持体とした手作り印画に必要な用品・薬品で通常のモノクロ印画処理と異なるものは、アートエマルジョン、マットスプレー、スポンジ、粘着テープ、乳剤保温用容器などで、その他の薬品・機材は手持ちのものがあればそのまま使用できる。

*注意:紙や布の支持体には下塗り剤は不要。

乳剤塗布の準備

まず、ヨーグルト状になっている感光乳剤を密栓したまま40~50度Cの湯で30~40分温め、液状にする。
乳剤を液化する間に、引伸機にネガをセットし、拡大率を決定する。そして乳剤を塗る支持体の布を置く。

注意:布に液化した乳剤を塗ると裏側に抜けるので、布の下にきれいな紙を置いて汚れが付着しないように作業することがポイント。 

また、布地表面の毛玉や織りムラは現像処理後キズとして現われるので、ピンセットで直前に除去したい。

乳剤の保温と塗布(暗室)

暗室内で、あらかじめ温めておいた容器に液状化した乳剤を必要量移す。乳剤をスポンジにふくませ、布にスリ込ように塗るのがコツである。布の場合、ハケ塗りよりもスポンジの方が簡単であり、安全である。

注意:乳剤は温度が低下すると硬化しやすい。保温バットなどで40~50度Cの温度を保ってやると乳剤の硬化が防げ、塗りやすい。

布地は紙に比べ、乾燥に時間がかかるので、十分な時間をかけ扇風機などで自然乾燥をしたい。仕上げには、油絵のキャンバスを張る木枠を用意しておくと便利である。また、乳剤をスポンジで塗り込む場合は、乳剤が手に付着しないようにゴム手袋を使用するとよい。液体乳剤というのは乾燥が進むにつれて感度が上がる性質を持っているので、乾燥は全暗黒で行うことが理想だ。

乳テストピースの作成(暗室)

プリント時の露光量は、支持体と塗布した乳剤の厚みによって異なる。そのため本番用の布と同じ塗り方をしたテストピースを作り、段階露光をして、最も適した露光時間を探り出すことが必要だ。

注意:手作り印画用乳剤の露光感度は、フジブロを1とすれば1.2~1.5倍の露光時間が必要で、感色性や階調では70~80%程度の再現力と思った方がよい。

 

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 紙編 彩色・仕上げ

彩色

フジイ・グラフィーは、ここまでの過程で得られたモノクローム画像のままでも、十分観賞に耐える作品だが、これを彩色することで、写真の次元から、作者の個性・感性にあふれたオリジナル作品を創り出すことができる。

彩色にはカラープリントのレタッチ用顔料から各種絵具、パステル・色鉛筆など、彩色に用いられるものならほとんど全てのものが使用できる。

ただこれまでの経験からいえることは、淡い色を塗り重ねるようにしたほうが、モノクロームの画像のトーンやグラデーションを損なわず、ムードある画面に仕上げられるようだ。

このため現在は、市販のカラープリントレタッチ用顔料を用いて彩色するようにしている。

注意:写真のようなパレットに少量の顔料をとり、適当に混ぜて好みの色をいくつか作り、水で薄めて広く淡い部分から、狭く比較的濃い部分へ、モノクロームの画像の上に淡い色を塗り重ねるように行なう。 

彩色の感じは鉛筆やコンテのスケッチを水彩画に仕上げるような感じで行ない、濃い色をいきなり塗らないように気をつけたい。

1回の筆さばきごとに、ティッシュペーパーなどで塗った個所を抑え、顔料の水分を吸い取り、必要な部分以外に色がにじみ出さないようにする配慮も必要で、これをおこたると、支持体の繊維の状態や性質により、毛管現象でとんでもない所に色のにじみが生ずることがある。

細かい部分の彩色は細い筆を使うこともあるが、その場合は綿棒でその箇所を抑え、水分を吸い取るようにする。

前後してしまったが、彩色の前にプリントが完全に乾いているかどうか、よく確認しておこう。生乾きのまま彩色すると、顔料が拡散し、色がにじんだりすることがある。

乾燥の確認方法に決め手はないが、十分な時間をかけた後、両方の手の平で支持体の端をはさむようにし、じっとりした冷たさが感じられなければ、まず大丈夫と思っていいだろう。
007

 

 

 

仕上げ

彩色が終わったフジイ・グラフィーは、やはり十分に自然乾燥させ、顔料を支持体に安定させる。はがれや変色を防ぐためには、乾燥後ガラス入りの額に入れるか、スプレー式の表面保護材を用いるといい。

注意:乾燥中・乾燥後も熱を加えることは禁物。ドライマウント仕上げなどを行なうと、熱により乳剤がはがれることがある。 

乳剤塗布の練習(明室)

暗室内でいきなり乳剤の塗布を行っても、まず思うように塗ることは難しい。乳剤のボタつき、ハケの下ろし方、力の入れ方など、意識すればするほど思い通りにいかないものだ。まして白い紙に白い乳剤を塗るのだから、失敗を恐れていては何もできない。ただ練習方法がないわけではなく、支持体に使用するのと同質の紙・ハケ、それに墨汁があれば明室で練習できる。

この方法で1回塗り、重ね塗りの勘を養っておけば、暗室での塗布作業もかなりスムーズに行えるはずだ。

注意:塗り方の勘を養うと同時に、プリントするネガにどのような塗り方が適しているか、を考えてみるのも大切だ。重ね塗りは見栄えはいいが、カスレやムラのある1回塗りのほうが面白みのある写真になることもある。 

 

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 紙編 乳剤の保温と頒布

乳剤の保温と塗布(暗室)

暗室ランプだけにした室内で、液状となった乳剤をあらかじめ温めておいたバットか、肉厚の容器に必要量移し、腰の柔らかい細毛のハケで紙に乳剤を塗り始める。

ハケを乳剤にたっぷり浸し、垂れ落ちない程度に容器の縁で切り、紙の上をゆっくりと、同じ速度で塗るようにする。面白いハケ目を出したかったら、手早く1回塗りで。きれいに塗りたかったら、2~3回重ね塗りしてみるのもいい。

ハケムラ、塗り残しと、最初のうちは思うようにハケ使いできないが、それもフジイ・グラフィーの面白さだから、形にこだわらず、手早く仕上げるようにしたい。

注意:乳剤は温度が低下すると固化するので、市販の保温バットか、バットに温水(40~50度C)を入れたものの中に乳剤を入れた容器を入れておくと、乳剤の固化が防げ塗りやすい。

塗布が終わって残った乳剤は、固化しないうちに元のポリビンに戻せば、再度使用できる。

塗布された乳剤は、約2分で表面の固化が始まるが、内部が充分に固まるには最低1~2時間の暗室内での自然乾燥が必要で、長期保存を考えるなら、6時間以上の暗室内自然乾燥をしておきたい。

なお、特に急ぐ場合はヘアドライヤーなどの温風で乾燥する方法もあるが、熱風を吹き付けると乳剤が溶けることもあるので、50センチ位離れたところから、40度C程度の温風を乳剤面全体に行き渡るように送ると、20分位で乾燥する。

テストピースの作成(暗室)

プリント時の露光量は、使用した支持体と塗布した乳剤の厚みにより、感度に大幅な変動がある。そのため本番用の印画紙にいきなりプリントすると、必ずといっていいほど失敗するので気をつけたい。

本番の紙と同じ塗り方をしたテストピースをいっしょに作り段階露光して、最もいいと思える露光時間を探し出すことである。

注意:手作り印画紙の露光感度は、フジブロを1.0とすれば1.2~1.5倍の露光時間が必要で、感色性や階調で70~80%程度の再現力と覚えておこう。

この点をふまえ、テストピースの段階露光は小きざみではなく、5~10秒単位で大きく振ったほうがいい。

現像処理が完了したテストピースには、使用絞り・露光時間・乳剤の塗り方などのデータを記入しておくと、本番の際にまごつかない。

また本番用の印画紙と共通の印を、紙の表裏のどちらかにシールなどで貼っておくと、塗り方・乳剤面の見分けが容易になる。

プリントと現像処理

本番プリント前のテストピースのプリントで露光データを得たら、いよいよ本番を開始する。

引伸しタイマー・引伸しレンズに露光時間と絞り値をセットし、引伸機のランプをつけて拡大率がテストピースのプリント時と同じことを確認し、引伸しレンズの前に赤フィルターをかけ、乳剤の塗布面が画像をきちんとカバーするように紙を置き、テープで固定する。

後は、引伸しランプを消して赤フィルターを外し、引伸しタイマーを作動させれば露光は完了する。

現像・停止・定着・水洗処理は通常の印画紙と同じだが、停止~水洗処理はバライタ紙以上の処理時間をかけたい。

注意:現像から定着までの薬品処理中は、プリント面を上にして放置しないように注意してほしい。支持体が紙の場合は浮き上がり、乳剤面が薬液の外に出てしまうことがある。

各処理時間は、現像1~2分。停止30秒~1分。第1定着5~10分(フジフィックス)。第2水洗1分。第2定着3~5分(スーパーフジフィックス)。QW(水洗促進剤)10分。第2水洗1時間。AGガード1分と、現像処理開始から終了まで、約1時間30分の時間をかけるようにしている。

乾燥は乳剤塗布後と同様、自然乾燥だが、たっぷり水と薬品のなか中に浸った後なので、半日程度の時間は必要だ。特に彩色をしようと思うなら、不十分な乾燥は失敗の元になる。

 

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 紙編 乳剤の保温と頒布

乳剤の保温と塗布(暗室)

暗室ランプだけにした室内で、液状となった乳剤をあらかじめ温めておいたバットか、肉厚の容器に必要量移し、腰の柔らかい細毛のハケで紙に乳剤を塗り始める。

ハケを乳剤にたっぷり浸し、垂れ落ちない程度に容器の縁で切り、紙の上をゆっくりと、同じ速度で塗るようにする。面白いハケ目を出したかったら、手早く1回塗りで。きれいに塗りたかったら、2~3回重ね塗りしてみるのもいい。

ハケムラ、塗り残しと、最初のうちは思うようにハケ使いできないが、それもフジイ・グラフィーの面白さだから、形にこだわらず、手早く仕上げるようにしたい。

注意:乳剤は温度が低下すると固化するので、市販の保温バットか、バットに温水(40~50度C)を入れたものの中に乳剤を入れた容器を入れておくと、乳剤の固化が防げ塗りやすい。

塗布が終わって残った乳剤は、固化しないうちに元のポリビンに戻せば、再度使用できる。

塗布された乳剤は、約2分で表面の固化が始まるが、内部が充分に固まるには最低1~2時間の暗室内での自然乾燥が必要で、長期保存を考えるなら、6時間以上の暗室内自然乾燥をしておきたい。

なお、特に急ぐ場合はヘアドライヤーなどの温風で乾燥する方法もあるが、熱風を吹き付けると乳剤が溶けることもあるので、50センチ位離れたところから、40度C程度の温風を乳剤面全体に行き渡るように送ると、20分位で乾燥する。

テストピースの作成(暗室)

プリント時の露光量は、使用した支持体と塗布した乳剤の厚みにより、感度に大幅な変動がある。そのため本番用の印画紙にいきなりプリントすると、必ずといっていいほど失敗するので気をつけたい。

本番の紙と同じ塗り方をしたテストピースをいっしょに作り段階露光して、最もいいと思える露光時間を探し出すことである。

注意:手作り印画紙の露光感度は、フジブロを1.0とすれば1.2~1.5倍の露光時間が必要で、感色性や階調で70~80%程度の再現力と覚えておこう。

この点をふまえ、テストピースの段階露光は小きざみではなく、5~10秒単位で大きく振ったほうがいい。

現像処理が完了したテストピースには、使用絞り・露光時間・乳剤の塗り方などのデータを記入しておくと、本番の際にまごつかない。

また本番用の印画紙と共通の印を、紙の表裏のどちらかにシールなどで貼っておくと、塗り方・乳剤面の見分けが容易になる。

プリントと現像処理

本番プリント前のテストピースのプリントで露光データを得たら、いよいよ本番を開始する。

引伸しタイマー・引伸しレンズに露光時間と絞り値をセットし、引伸機のランプをつけて拡大率がテストピースのプリント時と同じことを確認し、引伸しレンズの前に赤フィルターをかけ、乳剤の塗布面が画像をきちんとカバーするように紙を置き、テープで固定する。

後は、引伸しランプを消して赤フィルターを外し、引伸しタイマーを作動させれば露光は完了する。

現像・停止・定着・水洗処理は通常の印画紙と同じだが、停止~水洗処理はバライタ紙以上の処理時間をかけたい。

注意:現像から定着までの薬品処理中は、プリント面を上にして放置しないように注意してほしい。支持体が紙の場合は浮き上がり、乳剤面が薬液の外に出てしまうことがある。

各処理時間は、現像1~2分。停止30秒~1分。第1定着5~10分(フジフィックス)。第2水洗1分。第2定着3~5分(スーパーフジフィックス)。QW(水洗促進剤)10分。第2水洗1時間。AGガード1分と、現像処理開始から終了まで、約1時間30分の時間をかけるようにしている。

乾燥は乳剤塗布後と同様、自然乾燥だが、たっぷり水と薬品のなか中に浸った後なので、半日程度の時間は必要だ。特に彩色をしようと思うなら、不十分な乾燥は失敗の元になる。

 

フジイ・グラフィー(マル秘テクニック)公開 紙編

008

写真はなぜ印画紙のみに焼き付けるのか、という単純な疑問がフジイ・グラフィーを生み出したきっかけだが、いざ自分の手でモノクロの印画材を作る段になると、それまで考えもしなかった問題に直面することになった。

たとえば、紙を支持体とした手作りモノクロ印画紙を目指し、様々な紙質が異なる紙を集めたまではよかったが、これらを印画紙として使用するには、現像、停止、定着、水洗と、長時間に亘って水と薬品に浸しても変質しない、耐水、耐薬品性を持ったものでなければならず、このチェックを怠ったため、現像処理の途中で紙が分解してしまうといったトラブルにも何度か見舞われた。

現在、私が主に使用している紙は、BFKかレザックで、画材店で簡単に入手できる。これらの紙は、耐水、耐薬品性も高いので、初心者にはこの2種類の紙から入ることを勧めたい。

このほか、和紙の中にも化学繊維をまぜ込んだ耐水、耐薬品性を高めたものもがあるが、購入時に使用目的をよく説明することと、本番前のテストを忘れないようにしてほしい。

手作り印画紙に必要な用品・薬品

手作り印画紙に必要な用品・薬品で通常のモノクロ印画処理と異なるのは、写真用感光乳剤「アートエマルジェン」と下塗り剤、および乳剤塗布用のハケ、スポンジ、支持体固定用粘着テープ、乳剤保用容器などで、その他の現像処理薬と引伸機、バット、セーフライト、ピンセットといったものは、手持ちのものがあればそのまま利用できる。

また、プリントするモノクロネガについても特別の条件はないが、カラーネガやカラーポジを対象としたい場合は、ケンコーなど市販のデュープ機材を利用してモノクロネガにするか、ラボに依頼してモノクロネガにデュープする必要がある。

注意:カラーネガ、ポジからモノクロネガへのデュープは硬調になりやすいので、引伸しの際の露光時間は長くなる。またカラーネガから直接のプリントは、乳剤がパンクロタイプでないので向いていない。

乳剤塗布の準備

遮光性のポリビンに入った乳剤は、ビンの中でゲル状(ヨーグルト状)になっているので、密栓したまま40~50度Cの温水で約30~40分温め、液状にする。

また乳剤を液化する間に引伸機に選んだネガをセットし、拡大倍率を決定して乳剤を塗る紙を置く。引伸機の支柱側に暗室電球を1個セットし、逆光で乳剤の塗布面が見えるようにしておくことも忘れてはならない。

注意:乳剤を液状化する間、約10分ごとに天地を逆さにしながらかくはんするが、強く振ると気泡が発生しやすくなり、塗布面に気泡が残ることがあるので、かくはんは静かに行なう。

乳剤を塗る紙の固定はイーゼルマスクを使わず、引伸機の台板に直接紙を置くか、台板の大きさにカットしたベニヤ板を重ね、その上に紙を置いて四隅を粘着テープで固定したほうが乳剤の塗布作業がやりやすく、汚れを気にすることもない。

また拡大率決定時はピントルーペでしっかりピントを合わせ、フォーカスを固定して引伸しレンズの前に赤フィルターをかけると、乳剤の塗布範囲が見分けられる。

 

作品に〝感性〟と〝美〟を凝縮させたフジイ・グラフィー

 

【参考資料】富士フィルム アートエマルジョン パンフレット